
20代女性の患者様です。ガタガタした歯並び(叢生)が気になり、ご相談に来院されました。診査・診断の結果、歯並びの乱れだけでなく、前歯の真ん中(正中)のずれも確認されました。
今回は、舌側矯正(裏側矯正)で歯並びと正中のバランスを整えた症例をご紹介します。本症例では、治療前後の変化だけでなく、治療中の経過もあわせてご紹介しています。
患者様は、ガタガタした歯並び(叢生)が気になることを主な理由にご来院されました。特に前歯の重なりが気になり、人前で笑う際や写真を撮る際にも口元を意識されていました。
診査・診断の結果、前歯に叢生を認めるだけでなく、上下の前歯の真ん中(正中)にもずれが確認されました。また、歯並びだけではなく、噛み合わせ全体のバランスも考慮する必要がある状態でした。
患者様のお口の状態を総合的に診査・診断した結果、上下左右の前から4番目の歯(第一小臼歯)を抜歯し、舌側矯正(裏側矯正)で治療を行う方針としました。
本症例では、ガタガタした歯並びを整えるだけでなく、前歯の真ん中(正中)のずれも改善することが治療計画の重要なポイントでした。正中のずれは骨格的な原因ではなく、叢生によって歯が押し合うことで生じていたため、歯を適切な位置へ並べ直すことで改善が期待できる状態でした。
抜歯によって確保したスペースを有効に活用するため、アンカースクリュー(TAD)を併用し、全体の歯並びのバランスを考慮しながら歯を計画的に移動しました。前歯は上顎で約4mm、下顎で約2mm舌側へ移動する治療計画とし、最終的にはオーバージェット(上下の前歯の前後的な距離)2mm、オーバーバイト(上下の前歯の重なり)2mmを目標に設定しています。
矯正治療では、歯並びを整えるだけでなく、どの歯をどの順序で、どの程度動かすかを事前に計画することが重要です。本症例でも、全体の歯並びや噛み合わせのバランスを考慮しながら治療計画を立案しました。


本症例では、約2年間かけて舌側矯正(裏側矯正)を行いました。治療開始後は定期的にワイヤーの調整を行いながら、治療計画に沿って段階的に歯を移動させました。
初診時は前歯にガタガタした歯並び(叢生)がみられ、前歯の真ん中(正中)にもずれが確認されました。上下左右の前から4番目の歯(第一小臼歯)を抜歯し、歯を並べるためのスペースを確保したうえで治療を開始しました。
前歯のガタガタした歯並びは大きく改善し、一見すると歯並びは整ってきたように見えます。しかし、この段階では上下の正中にはまだずれが残っており、治療は途中の段階です。
上下の正中は徐々に揃ってきましたが、まだ細かな調整が必要な状態でした。抜歯によってできたスペースを閉鎖しながら、正中の位置や噛み合わせを確認し、全体のバランスを整えていきました。
約2年間の治療を経て、上下の正中が揃い、抜歯スペースも閉鎖されました。



当院では、歯並びを整えるだけでなく、噛み合わせの仕上がりにもこだわっています。その一つが、犬歯誘導(横方向に顎を動かした際に犬歯が噛み合わせを導く状態)の確認です。犬歯は歯根が長く、横方向の力を受け止めやすい特徴があるため、側方運動時に犬歯が適切に機能することで、奥歯への過度な負担を軽減できると考えられています。
そのため、歯並びが整ったように見える段階で治療を終えるのではなく、正中の位置や噛み合わせ、犬歯誘導まで確認しながら細かな調整を行いました。当院では、「歯並びがきれいになった」で終わるのではなく、10年後、20年後もできるだけ健康な歯で快適に噛み続けられることを目指し、見た目と噛み合わせの両方を大切にした矯正治療を行っています。

治療前は、前歯が重なり合ってガタガタした歯並びとなっており、上下の前歯の真ん中(正中)にもずれがみられました。
約2年間の舌側矯正(裏側矯正)により、前歯の重なりが改善し、歯並びがきれいに整いました。また、上下の前歯の真ん中も揃い、噛んだときに上下の歯がバランスよく噛み合う状態になりました。
矯正治療では、歯並びがきれいに見えるようになっても、その時点で治療が終わるわけではありません。本症例でも、その後さらに細かな調整を重ねることで、見た目だけでなく、噛みやすさにも配慮した仕上がりを目指しました。

治療後は、ガタガタしていた歯並びだけでなく、前歯の真ん中(正中)も整い、口元全体の印象が自然になりました。
矯正治療では、歯並びが整ってくる終盤になると、患者様ご自身では「どこを調整しているのだろう」と感じることも少なくありません。実際には、この時期こそ正中や噛み合わせ、犬歯誘導など、見た目だけでは分かりにくい細かな調整を重ねる大切な期間です。
本症例でも、患者様には最後まで治療方針をご理解いただきながら通院を続けていただきました。その結果、歯並びだけでなく、噛み合わせまで細部にこだわった仕上がりを目指すことができました。
当院では、完成した歯並びだけではなく、治療の経過もできるだけ患者様にお伝えすることを大切にしています。
矯正治療は、治療開始から数か月で歯並びが整って見えることもあります。しかし実際には、その後も正中の位置や噛み合わせ、犬歯誘導など、目に見えにくい細かな調整を重ねることで、より良い仕上がりを目指しています。
そのため当院では、「歯並びがきれいになったから終わり」ではなく、見た目と機能の両方を考慮した治療計画を立て、一つひとつの調整を積み重ねています。
また、舌側矯正(裏側矯正)は、装置が歯の裏側に付く見えにくい矯正治療であるだけでなく、歯の移動を細かくコントロールするために高い技術と治療計画が求められる治療法です。当院では、2013年から2026年までに2,000症例以上の矯正治療経験をもとに、見た目だけではなく、噛み合わせや将来的な安定性まで考慮した治療を心がけています。
今回の症例では、完成した写真だけでは伝わらない治療中の変化もあわせてご紹介しました。これから矯正治療をご検討される方にとって、治療の結果だけでなく、その過程や考え方も知っていただくきっかけになれば幸いです。
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