
20代の女性の患者様です。ガタガタの歯並びと前歯の噛み合わせに違和感があり、舌側矯正(裏側矯正)をご希望されて当院へご相談に来院されました。
患者様は、現役で矯正専門歯科に勤務されている歯科衛生士です。日頃から多くの矯正治療に携わる立場だからこそ、見た目だけでなく噛み合わせや治療計画まで納得できる治療を受けたいと考え、当院を選んでくださいました。
患者様は、ガタガタの歯並びと前歯の噛み合わせに違和感があることを主訴に来院されました。
精密検査の結果、下顎前突(下の歯が上の歯より前方に位置する噛み合わせ)の傾向を伴う叢生(歯が重なり合って並ぶ歯並び)が認められました。診断は、アングルⅠ級・Skeletal Class IIIの下顎前突でした。
また、左下の犬歯(左下3番)は大きく捻転して歯列の外側へ位置し、下顎の前歯全体が前方へ突出気味だったことから、歯肉退縮(歯ぐきが下がり歯の根元が露出した状態)がみられました。
歯並びの見た目だけでなく、噛み合わせや歯の位置も含めて総合的な診断が必要な症例でした。
この症例では、歯並びを整えるだけでなく、上下の噛み合わせのバランスや前歯の位置まで考慮した治療計画を立案しました。
精密検査では、上下前歯を現在の位置から上顎約4.5mm、下顎約5.0mm舌側へ移動し、オーバージェット・オーバーバイトともに2.5mmを目標としました。そのためには歯を並べるためのスペースを確保するだけでなく、前歯をどのくらい後ろへ移動させるかを細かく設計する必要がありました。
そこで、上顎は前から5番目の歯(第二小臼歯)、下顎は前から4番目の歯(第一小臼歯)を抜歯する治療計画を選択しました。
一般的に、前から5番目の歯を抜歯すると、できたスペースを前歯と奥歯で半分ずつ使いながら歯を動かします。そのため、前歯を後ろへ下げる量は比較的少なくなります。一方、前から4番目の歯を抜歯すると、できたスペースを前歯側により多く使うことができるため、前歯を大きく後ろへ移動させやすくなります。
この症例では、上顎は前歯を必要以上に後退させず、口元との調和を保つことを重視しました。一方、下顎は前方に位置していた前歯をしっかり後ろへ移動させる必要があったため、上下で異なる歯を抜歯することで、それぞれに必要な歯の移動量を調整し、噛み合わせや口元のバランスを整える治療計画としました。
また、左下の前から3番目の歯(犬歯)は捻転に加え、前方へ位置していたことで歯肉退縮(歯ぐきが下がり歯の根元が露出した状態)がみられました。そのため、歯を歯槽骨(歯を支える骨)の適切な位置へ移動させることも、治療計画における重要なポイントとなりました。

治療では、上顎は前から5番目の歯(第二小臼歯)、下顎は前から4番目の歯(第一小臼歯)の抜歯によって得られたスペースを利用しながら、計画通りに前歯を後方へ移動させました。
歯並びを整えるだけでなく、上下の噛み合わせや正中(上下の前歯の中心)が一致するよう細かな調整を繰り返しました。また、左下の前から3番目の歯(犬歯)は捻転を改善し、歯列内の適切な位置へ移動させました。
治療の最終段階では、歯並びだけでなく、噛み合わせや前歯の位置、左右のバランスまで確認しながら細かな調整を行い、治療を完了しました。

治療後は、ガタガタだった歯並びが整い、上下の前歯の噛み合わせや正中(上下の前歯の中心)の位置も改善しました。上下の歯がバランスよく噛み合うことで、機能面にも配慮した歯列へと変化しています。
また、前方へ位置していた左下の前から3番目の歯(犬歯)は歯列内の適切な位置へ移動し、治療経過の中で歯肉退縮についても改善傾向が認められました。
さらに、前歯の位置を計画通りにコントロールしたことで、歯並びだけでなく口元全体のバランスにも変化がみられ、自然な横顔の印象につながりました。

治療後は、歯並びや噛み合わせだけでなく、口元全体のバランスが整ったことで、以前より自信を持って笑えるようになったとお話しくださいました。また、「横顔を褒められることが増えた」と、日常生活での変化も実感されていました。
舌側矯正に慣れるまでは、装置が舌に当たることで食事や会話がしづらい時期もありましたが、歯並びが整っていく変化を実感することで、治療へのモチベーションにつながったそうです。
現役で矯正専門歯科に勤務する歯科衛生士という立場から、治療後は「噛み合わせや正中まで細かく調整してもらえたことが印象に残った」と感じられ、患者様へご自身の経験を踏まえて矯正治療について説明できるようになったことも、大きな変化の一つだったとのことでした。
舌側矯正(裏側矯正)は、歯の裏側に装置を装着するため目立ちにくいだけでなく、前歯を後方へコントロールする動きを得意とする治療法です。一方で、歯の動きを精密にコントロールするためには、高い技術力と豊富な治療経験が求められます。
この症例でも、上下で異なる抜歯部位を選択し、それぞれに必要な歯の移動量を細かくコントロールすることで、歯並びだけでなく噛み合わせや口元のバランスまで考慮した治療計画を立案しました。
当院では、2013年から2026年までに2,000症例以上の矯正治療に携わってきた経験をもとに、舌側矯正(裏側矯正)にも日常的に取り組んでいます。一人ひとりの歯並びや噛み合わせに合わせて治療計画を立案し、見た目だけでなく、将来的な安定性も考慮しながら治療を行っています。
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